489 views
menu

女性先輩研究者よりのメッセージ

農学専攻 蔬菜花卉園芸学研究室
2016年 博士後期課程修了
千葉大学 大学院園芸学研究院植物生命科学講座(花卉園芸学研究室)講師

出口 亜由美 さん

『現在の職業を選択した時期とその理由』
 大学入学前から大学教員になるのが夢でした、と言えると格好いいのですが、入学時も大学院進学時も、現在の職業、すなわちアカデミアでの研究者になろうとは全く考えていませんでした。漠然と研究職には就きたいという考えはありましたが、イメージしていたのは企業での研究職や地方の公務員でした。しかし、研究室で研究を進めていくうちにどんどんのめり込み、運も良かったのかもしれません、面白い結果が次々出て、新しいことを解明する感覚が心地よく、このまま研究を続けたいと思い始めました。修士課程では企業の就職活動にも挑戦しましたが、私にはピタッとくるものがなく見事に惨敗…笑。おそらく面接してくださった人事の方にも私の願望がうっすら見えていたのだと思います。同時期に恩師である当時の指導教員に「これからの時代、女性で働くのであれば研究者(大学教員)はいいかもしれないよ」との助言をいただき、就職活動をスパっと辞めて、博士課程に進学しました。将来の職に不安はありましたが(両親も心配していたと思います)、研究をし続けることが私の就職活動だ!と思い、続けた結果、博士号取得後に約1年間のポスドク期間を経て、今に至ります。

『現在の職務内容』
いわゆる大学の先生で、研究と教育を行っています。花卉園芸学研究室に所属し、学部3、4年生、大学院生とともに、花に関する不思議を解明すべく研究を行っています。研究テーマは、私の学生時代から継続して行っている花の色に関するものもあれば、新しくチャレンジしているテーマもあります。学生の卒業研究、修了研究の指導を行いながら、自分自身の研究も進めること、成果を論文にまとめて発表、新しい研究のアイディア探し、研究費獲得に向け助成金への申請等を行うことが主な仕事です。また、まだコマ数は少ないですが、教壇に立って講義も行っています。中堅になりつつあるので、大学や学部等の委員や所属学会の委員に呼ばれることも増えてきました。教員免許はもっていません。教育活動については、学生は一緒に物事を解明する共同研究者であり、私はこれまでの知識と経験を共有し、研究の加速を手助けする者というスタンスで行っています。
国立大学の教員なので裁量労働制が導入されています。私はこの職に就いてから2人の子供を出産しましたが、この制度のおかげで子育てしつつ仕事ができていると思っています。恩師の助言にはその意味も含まれていたのかもしれません。

『将来に向けての展望や後輩に向けてのメッセージなど』
私は思いもしていなかった職業に就いたわけですが、今はこの仕事が自分に合っていると感じています。アイディアと頑張り次第で、自分の興味のあることを突き詰められます。楽しくて仕方がないです。花という嗜好品が対象のため、とても贅沢な研究をさせてもらっていると思いますが、これを贅沢で終わらせず、花の研究から、マクリントック氏のトランスポゾンの発見のような「生物の新しいメカニズム」を発見することを目指し、邁進していきたいと思います。
私は人付き合いが得意とは言えず、誰かに何かを教える教員なんてできるはずがないと思っていました。しかし、意外にもそんなことはなく今学生との関係は良好と思います。経験値が上がり、いい意味でおばさん化したのかもしれません。このメッセージを読んでくださっている学生の皆様には、合う合わないを早々に決めつけてしまわず、柔軟でいることも一つの道であることお伝えしたいです。大学院で仲間や教員と様々なことを議論し、多くのことを経験してください。思いのほか将来の選択肢は広がっていくと思います。

 

森林科学専攻 森林生物学分野
2016 年博士後期課程修了
国立研究開発法人森林総合研究所
樹木分子遺伝研究領域樹木遺伝研究室

伊津野 彩子 さん

 私は、樹木がどのようにして様々な環境に適応しているのか、遺伝情報をもとに研究しています。主に、野生の樹木のゲノムを解読し、その種がこれまでに経験してきた個体数変動や、生育環境の変化に応じた遺伝的な変化を推定しています。多様な環境への適応を遂げてきた樹木の歴史を紐解くことで、将来の環境変動に対する樹木の応答を予測し、適切な森林管理・保全策の構築に貢献したいと考えています。
 現在の職業に就いたきっかけは、在学中に所属した研究室で、野外で見られる生態学的現象を遺伝学の手法を用いて研究する「生態遺伝学」に出会ったことでした。ちょうど、遺伝解析技術にブレークスルーが生じた時期で、野生生物であってもゲノム解読を行い、詳細な遺伝機構を研究できるようになりつつありました。もともと興味のあった生態学と遺伝学の両方に携わることができ、技術革新による大きな発展が見込まれるこの学術分野に魅力を感じ、卒業後も研究を続けたいと考えるようになりました。
 修士・博士論文をまとめるにあたり、研究を最後までやり遂げる根気や、論理的思考の大切さを学びました。また、セミナーや野外調査の手伝いを通じて、他の学生の研究に関わる機会も多く、視野を広げることができました。そうした大学院時代の経験は、今の研究活動に活きていると感じています。

<以下の方々は、農学研究科GUIDEBOOKに掲載させて頂いた方です。>

489 views
489 views