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今、人類が直面している難問のなかで、私達の生活に最も関連が深い問題は、食料問題と環境問題といえます。この問題は、先進国、途上国を問わず、また政治経済体制の如何を問わず、近年、ますます深刻になってきています。こうした状況は、世界中の国が、急速な発展のために効率性のみに重点をおいた経済政策を長年にわたってとり続けた結果、生じてきた問題です。資源は無尽蔵ではなく有限であることを再認識し始めた現在、私達は、短期的な効率性追及よりも、長期的な持続的発展の可能性を模索することが重要であることを悟りました。またこうした問題は、各国内で適正に取り組むと同時に、国際的規模での調整を必要としてきており、国内政策と同時に貿易問題が大きなウェイトを占めるようになってきています。農林水産業は、無機的な工業技術とは異なり、各地域の自然生態系と社会のあり方を反映しながら、地域的個性を活かして環境保全と調和した持続的展開をめざさねばなりません。食料問題も環境問題も人間の創り出した社会・経済システムの産物です。
本学科はその解決を課題とすると同時に、他の学科で行われる自然科学的諸研究の成果を積極的に吸収し、それらが現実社会に適切に受容されるための諸条件を探ることや、これらを農学論として総括し、新しい農学のパラダイム(理論体系)を発信していくことも目標にしています。
本学科はこうした問題に、幅広い角度から研究することを目指しています。農学部の他学科のほとんどが自然科学的な研究手法をとるなかで、この学科のみが人文・社会科学的な研究手法を用います。人類の営み、すなわち人類と自然との関わり合いを研究するにあたって、人文・社会科学的な考察は極めて重要な分野であるといえましょう。この学科では、農林水畜産業の担い手と、その場である農山漁村の文化的・社会的・経済的環境の特質や発展方策を解明します。また、地域規模・地球規模での環境保全との調和と、より豊かで安定した社会・経済のあり方を追求するために、他産業や都市との関係にも目を配るとともに、広く世界的視野において農業・農村・環境問題とその考察方法を学びます。この学科は次のような8つの教育研究分野からなります。
またこれらは、大きく分けて3つのグループから構成されています。
現実の農業問題を個別農家や農業組織の次元から捉え、その経営管理、会計情報処理のあり方について学ぶ2つの分野があります。これらの分野は、農業・農家の問題をミクロ的に分析するグループで、実態調査を重視しています。つぎに、現実の食料・環境問題を地域または国家次元で捉え、地域環境資源の保全と開発、それに対する農林業政策、さらに途上国の農村開発についての基礎理論を学ぶ4つの分野があります。これらの分野は、地域次元の資源・環境問題についてマクロ的に分析するグループで、実証的接近法を重視しています。さらに、農業・農村社会の問題を歴史的経過の中で捉え、その展開過程と国際比較について基本的な考察方法を学ぶ2つの分野があります。これらの分野は、農林水産業の産業的特質や科学としての農業史と農学理念について論じるグループです。