menu

振動工学と農学の融合により、倒れにくい飼料トウモロコシの迅速選抜手法を開発

投稿日: 2023-04-28

Sharma Vikas 農学研究科研究員、友部遼 東京工業大学助教、中島大賢 北海道大学助教、加藤洋一郎 東京大学教授らのグループは、弾性波を使うことで、飼料用トウモロコシの茎部ヤング率を非破壊的かつ迅速に、高精度で計測する新技術を開発することに成功しました。さらに物理数値シミュレーションと、ほ場試験により、新技術で得られたヤング率の妥当性を確認しました。

 本研究グループは、地震工学に着想を得た超小型センサーアレイを開発し、物理数値シミュレーションと組み合わせることで、トウモロコシ品種の弾性係数のうち、ヤング率をハイスループットに評価する手法を提案しました。本研究では、トウモロコシ地際部を軽く叩いて発生させた弾性波を、トウモロコシの茎に取り付けたセンサーアレイにより観測し、その波形を解析することで、0.1秒以内に茎部のヤング率を計測しました。さらに、トウモロコシ個体全体を揺らす振動試験と、有限要素法に基づく再現シミュレーションを組み合わせて検証した結果、得られたヤング率の妥当性が確認されました。

 これまでの穀実作物の耐倒伏性系統の選抜では、材料試験機を用いた破壊的検査が行われてきました。この従来法では、ほ場から個体単位で茎葉部を刈り出し、茎部断片を作成し、新鮮なうちに曲げ試験により強度を求める必要があるため、トウモロコシの育種への適用は困難でした。

 本研究成果により、トウモロコシの茎の弾性係数を推定するための非破壊ハイスループットフェノタイピングが可能となったことで、今後、台風や豪雨に際しても倒れにくい飼料用トウモロコシ系統を迅速かつ非破壊的に選抜できると期待されます。

 本研究成果は、2023年3月25日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

詳しくはこちらをご覧ください。

EbO-FEMによる非減衰モード解析により推定された、供試6品種((A)KD580、(B)LG2533、(C)NS115、(D)Taranis、(E)Flec、(F)P9027)の固有振動モード。赤色の箇所で応力レベルが高く、曲げ/挫折リスクの高いホットスポットであると推定される。B、Cでは上部のみ、A、D、E、Fでは上部および下部にホットスポットが局在している。