森林科学科

自然の過度の利用が地球環境問題を引き起こすことが明らかになった現在、生産性増大のみをめざすのではなく、環境の保全に配慮し、限られた資源を有効に利用する生活様式を探ることが、人類の直面する大きな課題となっています。そのためには、地球-人類共生の可能性を見いださなければならず、陸地面積の27%を占め、枯渇に至る化石燃料に代わる資源・材料を提供できる森林の持続的管理が、キーワードであることは間違いないところです。木材などの生物資源を利用しながら森林の環境保全作用が失われないようにしてゆくという、国内海外を通じた21世紀の大問題に応えるためには、森林に関する科学的知識に基づき、斬新な戦略をたてることのできる若い人の力が強く要請されています。

そこで森林科学科では、森林生態系の機能・構造と物質循環を基礎として、森林資源の持続的な生産技術、木材や紙をはじめセルロースや生分解性プラスチックなどさまざまな林業生産物の利用法、水や大気などの環境保全に果たす森林の役割など、森林にかかわるさまざまな課題により、さらにこれらの社会科学的評価を通じて、広く森林を取り扱う総合科学の確立をめざしています。また、このような広い総合的な知識を教育することと同時に、ひとつのテーマを深く掘り下げ追求することで新しい発見が得られるよう、森林科学科を構成する個々の19分野によって指導を行っています。

森林科学科に属する分野としては、1.森林生態系に関する自然科学的な基礎と応用を教授する、森林生物学、森林生態学、熱帯林環境学、森林生化学、森林水文学、山地保全学、森林利用学、森林育成学、森林情報学、2.森林から産み出される生物資源の利用に関する、林産加工学、生物材料設計学、生物繊維学、樹木細胞学、複合材料化学、生物材料化学、エネルギーエコシステム学、さらに、3.森林-人間共生にかかわる、森林・人間関係学、森林環境計画学、環境デザイン学、生物圏情報学などの講義や実験に加えて、森林を実際に体験し、森林を理解するための京都の芦生研究林、上賀茂試験地、北海道研究林などフィールド科学教育研究センターを活用した野外実習を通じて、森林とその生産物について学んでゆきます。

3回生では、授業や実験・実習をとおして、森林とその利用を総合的に理解するための基礎を教育しています。4回生では、そうした森林科学についての基礎の修得に基づき、表に示されている個々の分野に分属して課題研究を行います。森林科学科ではこれらの過程によって、森林とそこから産み出される生物資源の利用についての総合的な学問基盤と、専門研究に対する深い取り組み姿勢を獲得することを目標とします。

各分属分野のキーワード

分野 キーワード
森林・人間関係学 森林資源問題、森林管理、先進国の林業と木材産業、森林とツーリズム、森林と文化
熱帯林環境学 熱帯地域の天然林や産業造林の物質循環と土壌生態、森林の構造と動態、ならびに多様な森林・林業システムの木材生産と環境保全機能の評価と持続的発揮
森林利用学 持続的森林経営、森林の環境保全機能、環境要因と樹木成長・木部形成、人工林の保育と木材材質、リモートセンシングによる森林資源評価
森林生物学 樹木の生長と環境、林分の構造と動態の解析、森林に棲息する大型動物の保全、野生生物による森林被害の防止、食葉性森林昆虫と樹木の相互関係
環境デザイン学 造園の歴史、庭園・都市公園・自然公園の計画とデザイン、景観と生物多様性の保全、都市緑化、自然再生、自然環境のアセスメントミティケーション
山地保全学 侵食の機構と対策、森林の侵食・流出への影響、山地災害の防止・軽減、雨水流出・浸透機構、土石流の予知・予測、斜面崩壊・地すべりのメカニズム、砂漠の緑化
生物材料設計学 森林バイオマス材料(木材・竹材etc.)の諸物性、力学・電気・磁気的緩和挙動、多物質との相互作用、新規材料特性の解明、木材表面の画像解析、木質材料の官能特性解析、破壊力学、木材構造力学
林産加工学 木材の加工と利用の科学、快適な作業環境、職人芸を科学する、住宅部材の非破壊試験、住宅と音
生物繊維学 セルロース及び種々の多糖分子の構造と特性、紙とパルプの科学、磁場を用いた生物繊維の配向、配列による生物繊維集合体の高機能化、高度利用
樹木細胞学 世界の森林資源、樹木の成長、細胞壁の形成、生物の形の意味、マクロからミクロへ
複合材料化学 バイオマス系ハイブリッド材料、バイオマスのプラスチック材料化、バイオマスの液化と樹脂化、生分解性プラスチック、多糖・脂質をベースとした高機能材料
生物材料化学 バイオマスの有機化学、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、抽出成分(タンニン)、構造と性質・生理活性、機能解明と利用、熱帯林産物の有効利用
森林生態学 森林生物の多様性、物質循環機構、土壌分解系の生物、植物の行動様式、寒帯から熱帯へ
森林水文学 森林と水循環、物質循環と水質形成、洪水・渇水の緩和、一枚の葉から生態系全体に至るH2O/CO2変換、半乾燥地・熱帯林の水循環、地球温暖化と森林の相互影響
森林生化学 組織培養、樹木のDNA・RNA解析、植物における糖の転流、花成制御機構、
タケ・ササ・イネなどの植物分子生物学、森林の
物質循環、キノコの分子生物学、遺伝子工学、木材の生分解機構、キノコのバイオテクノロジー
森林育成学 森林の多様性、森林維持、森林生産、種分化、環境測定、森林植生管理、大気-森林-土壌における物質循環
森林情報学 森林の機能評価と空間立地整備、森林管理と環境情報利用、持続型生産システムと応用技術、森林のモニタリングと森林認証システム、物質流出入機構
エネルギーエコシステム学 バイオマス、エネルギー化、有用ケミカルスへの変換、超臨界流体、バイオディーゼル、環境浄化型木質炭素材料、高機能性木質材料、熱分解機構の解明と制御、地球上での炭素循環
生物圏情報学 地理情報システム、リモートセンシング、環境教育/環境学習、環境の評価法、生物資源・環境の情報システム