資源生物科学科

人類は、陸地や海洋に生育・生息する植物、動物、微生物などの多様な生物を、みずからの生命を維持し活動するための糧とするとともに、日常生活を支えかつ豊かにする貴重な資源として利用してきました。そして、その長い歴史において、このような生物資源をそれぞれの利用目的にとってより望ましいものに改良するとともに、それらの潜在能力を最大限に引き出す栽培・飼育方法を確立することや生育・生息しやすい環境を整えることに、多大な努力を重ね知恵を絞ってきました。その結果今日では、一見身の回りに食べ物や生活物資があふれているようにみえますが、地球規模で見れば 21世紀の食料生産が人口増加に追いつきそうにない深刻な事態に直面しており、また資源生物の過度な利用が、地球環境の悪化や生態系の破壊を引き起こしつつあるという重大な問題を抱えています。したがって、資源生物のより安定した高い生産性とよりよい品質の確保を、環境との調和と生態系へのマイナスインパクトの低減を図りながら追求していくということは、これからの地球と人類に求められている大きな課題です。

資源生物科学科は、この大変難しいがチャレンジングな課題に取り組む人材を育てるため、基礎知識から応用技術まで、幅広い教育を提供する学科です。学科は30分野(内容は下記参照)という多くの専門分野から構成されています。それは、食用作物や他の資源植物、家畜や他の資源動物、海洋の魚介類や微生物といった多様な生物を、マクロからミクロまで、すなわち集団、個体から細胞・分子にいたる様々な視点から研究しているからです。また、それぞれの資源生物を如何にして外的から保護し、その生育・生息する環境を好適な状態に維持するか、さらには如何にして不良環境下でも高い生産性を得るかについても、新しい品種等の創出も含めた研究がなされています。

このように資源生物科学科の教育内容は広い領域・分野にわたっていますが、大きくは下表に示す4つのグループに分けることができます。したがって、1~2回生ではまず資源生物科学全般について学び、3回生ではそのなかで興味が深まったグループの科目を中心に受講して、それをもとに4回生での分属分野を選択するのが望ましいでしょう。

グループ 分野
資源植物 作物学、育種学、蔬菜花卉園芸学、果樹園芸学、栽培システム学、植物生産管理学、植物遺伝学、植物生理学、栽培植物起原学、品質評価学、品質設計開発学
資源動物 動物遺伝育種学、生殖生物学、動物栄養科学、生体機構学、畜産資源学、生物資源情報科学
海洋生物 海洋生物環境学、海洋生物増殖学、海洋分子微生物学、海洋環境微生物学、海洋生物生産利用学、海洋生物機能学
生産環境 雑草学、熱帯農業生態学、土壌学、植物病理学、昆虫生態学、昆虫生理学、微生物環境制御学、生態情報開発学

 

各分属分野のキーワード

 

分野 キーワード
作物学 食糧生産と環境、作物の生産性と遺伝子型・環境相互作用、環境ストレス耐性、生育予測モデル、情報計測、環境調和型の作物生産技術
育種学 品種改良、重要農業形質の遺伝分析、突然変異、病原性関連タンパク、遺伝子組換え、トランスポゾン
蔬菜花卉園芸学 環境制御と生育調節、機能性野菜の開発、花色の変異機構の解明、有用品種の作出、塩素殺菌とリン酸難溶化を利用した有菌下での植物への有機物施与
果樹園芸学 開花結実生理、果実発育・成熟機構、バイオテクノロジーによる果樹育種、果樹遺伝資源の系統分類、自家不和合性遺伝子解析
栽培システム学 農業生産生態システム、集落営農、田畑輸換、窒素循環、環境調和型の農業生産システム、広域情報計測、集落農業管理システム
植物生産管理学 温暖化に備えた高温耐性作物の開発休眠性メカニズムの解明、機能性成分の遺伝子解析、自家不和合性遺伝子の解析、染色体とゲノム解析、バイオテクノロジーと種苗生産
植物遺伝学 コムギ、細胞遺伝学、ゲノム、染色体、動原体、病害抵抗性、倍数体、細胞質遺伝、シロイヌナズナ、集団遺伝学、進化
植物生理学 環境応答の分子機構、花成、核酸と蛋白質による長距離情報伝達、頂端分裂組織の維持機構、エピジェネティクス、根粒形成と菌根形成
栽培植物起原学 栽培植物と近縁野生種の遺伝的多様性、植物分子系統学、作物の起源、民俗植物学、遺伝資源の探索、コムギの系統保存事業
品質評価学 食糧作物や食品素材の品質評価、油脂食品の高品質化、タンパク質・多糖類の構造機能解析と利用、味覚
の受容メカニズム、酸化脂質の生体への影響と食品成分による防御
品質設計開発学 分子農業、高品質作物の設計・開発、遺伝子組換え作物、貯蔵タンパク質の輸送・集積の分子機構、タンパク質工学、食糧タンパク質・酵素の機能設計、x線結晶構造解析
動物遺伝育種学 動物の遺伝的能力の評価、線形代数の応用、動物集団の遺伝的構造、有用遺伝子のクローニング、脂肪蓄積の遺伝的制御機構
生殖生物学 クローン動物、細胞分化と脱分化、胚性幹細胞と生殖幹細胞、遺伝子組換え動物、哺乳動物卵子の体外受精と体外培養、哺乳動物の胚発生の分子機構解明
動物栄養科学 比較動物栄養学、栄養生理学、脂肪細胞の分化、ビタミン栄養、ミネラル代謝、食料・飼料の代謝調節機能
生体機構学 動物の生理・生産機能の評価、動物の環境生理と地球温暖化、環境汚染と環境ホルモン、卵巣の凍結保存
畜産資源学 動物生産システムの生物学的・経済的評価、世界の動物生産システムの比較、環境保全型動物生産、動物遺伝資源の保全計画の評価
生物資源情報科学 gps・gisを用いた放牧管理技術、動物生産のための情報システム構築、バイオテレメトリー等を用いた水圏生物情報の解析、水圏生物の保全技術
海洋生物環境学 沿岸海洋、海洋環境保全、水産海洋、海洋生態系の仕組み、生物・物質輸送、河川・沿岸海域・外海域の相互作用、富栄養化と貧酸素化機構、安定同位体比、物質循環
海洋生物増殖学 沿岸性魚類の初期生態、ヒラメ・カレイ類の変態機構、海と川を往復する魚の生理生態、有明海特産魚類の保全生態、魚類分類学、魚類系統学
海洋分子微生物学 海洋性超好熱古細菌、深海底熱水環境、極限環境微生物の生理・生態、極限酵素、バイオ水素生産、脱窒細菌の生理生態、有毒微細藻のゲノム解析と遺伝子診断
海洋環境微生物学 微細藻類・菌類によるカルテノイド・バイオ燃料等有用物質生産、深海(微)生物、大型藻の分類と利用
海洋生物生産利用学 未利用資源、食品機能、生理活性物質の探索、甲殻類の生体防御機構、高度不飽和脂肪酸の生理機能、脂質代謝の分子制御、遺伝子導入、生殖細胞、内分泌かく乱、メダカ
海洋生物機能学 海洋生物機能成分のライブラリー化とその応用、有機・無機ハイブリッド素材の開発、干潟の生物機能を活用した環境浄化、遺伝子組換えによる養殖魚の品種改良
雑草学 雑草管理、雑草の生活史特性、雑草の除草剤抵抗性生物型、外来雑草の侵入・定着と拡散、作物ー雑草複合、擬態雑草
熱帯農業生態学 農業資源、気象環境、土壌・植物の水動態、環境ストレス、作付体系解析、土地利用の変化、作物の分布・伝播、樹木作物の環境と生理、熱帯果樹園芸、gis
土壌学 熱帯及び乾燥地の土地劣化と土壌管理技術、土壌生態系における物質動態、土壌汚染の評価と回復、土壌特性値の空間変動解析、土壌の養分供給機構の解析
植物病理学 植物ウイルス、植物病原状菌、病原性遺伝子の分離・解析、抵抗性植物の作出、分子生物学、rnaゲノム、有用遺伝子の探索
昆虫生態学 個体群生態学、行動生態学、繁殖戦略、個体群動態、植物・昆虫相互作用、昆虫・天敵相互作用、害虫管理
昆虫生理学 情報と行動学、情報化学物質、資源探索、性選択、昆虫行動学、行動生理学
微生物環境制御学 菌根菌類の生理・生態、マツザイセンチュウ病の発生生態、菌類、線虫類の分子系統分類、菌類遺伝子の水平・垂直伝播、病虫害防除への微生物利用、微生物が介在する生態関係
生態情報開発学 生物間相互作用、ハダニ総合管理、分子生態学、遺伝変異、天敵、適応形質の進化、ハダニ類の系統分化、薬剤抵抗性